「紙とペンさえあれば今すぐ書ける」と言われる自筆証書遺言。
しかし、民法で定められたルールを一つでも外すと…遺言書全体が無効、または一部が無効になるリスクがあります。
⬛︎ 自筆証書遺言の4大ルールと「ページ単価の無効」を防ぐコツ
ルール1: 本文は全文・日付・氏名を自書し押印(968条1項)
● ボールペン・万年筆 OK。日付は「2025年7月24日」など具体的に
● 本文に欠陥があると遺言全体が無効リスク
ルール2:財産目録は PC 作成可。ただし各ページに署名押印(968条2項)
● 通帳コピー・不動産登記簿添付でも可
● 署名・押印のないページのみ無効リスク(札幌地裁 R3.9.24)
ルール3:封印があると家庭裁判所で開封(民法1004条3項)
● 糊付け厳重封印は開封に立会い必須
● 方式違反ではないが手続き増
ルール4:法務局保管制度で検認不要(法務局における遺言書の保管等に関する法律11条)
● 原本を国家保管、オンラインで情報証明書取得
・紛失の心配皆無 ・検認不要
【実務ヒント】
● 民法968条2項記載の相続財産目録の署名押印忘れが見つかったら、そのページを書き直して差し替えるか、全文を書き直すのが安全です
● 部分無効説があっても、争いの火種になることは変わりません。
⬛︎ 失敗しない! 作成から封筒へ入れる6ステップ(部分無効対策付き)
① 財産リストを作る … 口座番号・不動産の地番を正確に
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② 本文を手書き … 相続人・受遺者・遺言執行者を明記
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③ 財産目録をPC作成(任意) … 各ページに署名・押印。忘れるとそのページが無効に
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④ 本文に日付・氏名を書き押印 … 元号と西暦を混在させない
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⑤ 封筒に入れ「遺言書在住」と記載 … 封筒に氏名・作成年月日も書くと安心
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⑥ 封印は控える or 開封手続を理解 … 厳重封印すると民法1004条3項により家庭裁判所+相続人又は代理人の立会いでしか開封不可
⬛︎ 法務局保管制度※って何? ※正式名称:法務局における遺言書の保管等に関する法律
● 遺言者本人が最寄りの法務局(遺言書保管所)へ予約のうえ持参
● 専用窓口で本人確認 → 原本をスキャン&封印し、遺言書保管ファイルに登録(同法4条)
● 手数料は1件3,900円(収入印紙)
【メリット3つ】
■ 紛失・改ざんを防げる
■ 検認が不要(同法11条:民法1004条1項の適用除外)
■ 死亡後、相続人はオンライン請求で「遺言書情報証明書」を即日取得できる
⬛︎ 保管制度の申し込み3ステップ
① 予約 :法務局のウェブまたは電話で「遺言書保管」の予約
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② 持参 : 遺言書(原本1通)/本人確認書類(運転免許証等)/手数料分の収入印紙(3,900円)
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③ 完了通知書を受取 : 保管番号が発行され、以後の閲覧・変更・撤回に使います
【豆知識】相続人が保管の有無を調べたいときは、死亡診断書などを添えて「遺言書情報証明書」の交付請求をすると、原本を見なくても内容を確認できます
【まとめ】
◆ 民法968条を守れば自筆証書遺言は合法
◆ 「法務局における遺言書の保管等に関する法律」の保管制度を使えば紛失リスク回避& 検認不要
◆ 手数料3,900円で“国家保管+オンライン検索”の安心が買える
「自筆証書で十分? それとも公正証書が良い?」と迷ったら、まずはお問い合わせください。
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※本記事は2025年7月9日時点の民法(第960条〜第1027条)および法務局における遺言書の保管等に関する法律に基づく一般的情報です。個別案件については、必ず司法書士・弁護士などの専門家へご相談ください。
司法書士法人ののがき事務所